初回請求の重要性と失敗した時の影響


1. 受給したければ初回請求が重要


障害年金を受給するためには、初回の請求を適切に行うことが、とても重要です。制度上は、不服申し立てができたり、一定期間を経れば、再度請求を行うことはできます。しかし、不服申し立てにより、年金事務所の決定を覆すことは、極めて難しいですし、再度請求する場合においても、初回請求で提出した文書はしばらく年金事務所に保管されるため、以前の内容とのつながりや整合性が問われることとなります。加えて、初回請求が不支給だったということは、何らかの不支給の理由が存在していたわけですので、再度請求では少なくともその理由が解消していることを認めてもらう必要があります。これはなかなか困難な作業になるでしょう。さらに言えば、もしも初回請求時の提出文書との間に、少しでも矛盾点があれば、それを合理的に説明できないと信頼性が低いものと判断されることにもなります。最悪の場合、不正請求を疑われることにもなりかねません。このように、再度請求では、年金事務所が初回請求時の文書を参照できることによって、障害年金の受給までのハードルがどうしても上がることになります。


2. 主治医への診断書の作成依頼の仕方が肝


不支給となるのは、多くの場合、「診断書の内容」が理由です。障害年金の受給要件には、加入要件や納付要件もありますが、これらは客観的に確認ができる絶対的な要件です。対して、障害状態要件については、主治医が作成する診断書が根拠になっています。主治医も人間であり、人間が作成した文書を根拠としているという点を踏まえると、障害状態要件は、加入要件や納付要件と比べると、客観的・絶対的な性質が弱く、主観的・相対的な性質が強い要件だと言えます。特に、精神障害を理由とする請求の場合には、精神疾患を科学的に診断できる技法が未確立であるという事実も関係して、こうした傾向は一段と強いと言えます。ほかにも、障害年金の診断書は、特殊な形式であり、通常の医学的な情報だけではなく、普段の診察では必ずしも問診しないような生活面や就労面の不便さ・困難さを多く記載する書式となっています。主治医としては、障害状態を診断書の中に丁寧に記載したいという想いがあったとしても、障害年金の診断書を作成するにあたって、改めて当該情報が具体的に提供されない場合には、適切な診断書を作成することが難しいといった事情もあります。このため、初回請求時において、主治医に診断書の作成を依頼する際には、それに必要な具体的情報を一緒に提供するなどの工夫をして、丁寧な依頼を心掛けることが大切になります。


3. 社会保険労務士であり精神保健福祉士であることの強み


トップページでも紹介している通り、私は社会保険労務士であり精神保健福祉士です。これらの国家資格をただ有しているだけではなく、実際にどちらの実務経験もあります。すなわち、障害年金の制度に関する知識(社会保険労務士としての知識・経験)に加えて、精神科医療や精神科医の視点、業界の慣習など(精神保健福祉士としての知識・経験)まで、かなりの程度理解していると思っています。ここで、あまり自分を売り込むつもりもありませんが、しかしながら正直に言うと、これまでに「初回請求をする前に相談してくれたら良かったのに」と思った場面に何度か出会っており、そういう時には本当に気の毒だなと感じてきたので、今回この記事を書きました。

 

初回請求の失敗は、想像以上にのちのちまで尾を引きます。障害年金の請求を考えたら、最初にご相談をいただくことをお勧めします。