1. 受給要件としての労務管理
障害者雇用助成金に限る話ではありませんが、助成金を受給するためには適正な労務管理が必須です。特に、法令遵守は絶対条件です。助成金申請では、申請書類そのものに加えて、添付書類として、例えば、①出勤簿、②労働契約書(または、労働条件通知書)、③賃金台帳(または、給与明細)などを合わせて提出します。助成金申請を受理する都道府県労働局などでは、添付書類の確認を通じて、法令が遵守されているかを判断します。
もしも、労働契約書どおりの勤務形態になっていないことが出勤簿から明らかであったり、賃金台帳から必要な割増賃金が未払いであることが確認されたりしたら、まず助成金は支給されません。提出された書類のすべてに違法な点や不整合な点はないか、きちんと労働の実態をあらわしているか、などを精査したうえで、助成金申請に臨む必要があります。
2. 助成金の不正受給のリスク
助成金は法令遵守が絶対条件ですので、いわゆるブラック企業は助成金を申請できません。反対に、助成金を受給することができれば、適正な企業であることの証として、社会にアピールできるでしょう。
仮に、実態を偽って不正受給をしてしまったら、どうなるでしょうか。すでに受給した助成金の返還に加えて、返還までの利息、不正受給額の2割相当の違約金の支払いを命じられることになります。特に、悪質な場合は詐欺罪として告訴される場合もありますし、事業者名が公表されることもありますので、相当の社会的制裁を受けることになります。不正受給は絶対にしてはなりません。
3. 人事労務制度導入と助成金申請の時期
ほかにも、助成金を受給していくためには、人事労務制度の導入と助成金申請の時期を念頭に置いておかなければなりません。助成金のなかには、国が推進したい人事労務制度を導入した場合に受給できるというものがあります。こういう助成金の場合、種類にもよりますが、基本的には「申請が先、制度導入が後」という関係です。つまり、助成金の要件となっている人事労務制度を、助成金申請以前から導入をしていると、(そのこと自体は素晴らしいことなのですが、)助成金は受給できないということです。
国は、あくまでも国が推進したい人事労務制度を、助成金という手段を使って普及することを目的としているからです。助成金を使わなくても普及するのであれば、あえて助成金を使う必要はありませんね。この考え方は、人事労務にかかる「制度の導入」だけでなく、人事労務にかかる「取り組み」についても同じです。助成金の申請以前に取り組んだものについては、原則として対象になりません。ですので、助成金の申請は、組織的・計画的に行う必要があります。
4. 障害者雇用管理にあてはめると
具体的に、「障害者トライアル雇用助成金」を例に考えてみましょう。この助成金は、障害者の適性を見極めるために、一定期間試行的な雇用をした場合に受給することができるものです。したがって、手順としては、まず、①「試行的雇用に取り組むための計画を作成し提出する」ことが必要です。次に、②「対象となる障害者の受け入れ(トライアル雇用での採用)」を行い、③「受け入れた障害者に実際に試しに働いてもらう」ことになります。並行して、当該助成金の趣旨にのっとり、④「障害者の適性を見極め、継続雇用の可否を判断」します。これらすべてのプロセスを経て、最後に⑤「助成金の支給申請を行う」という流れになります。
この工程を管理するのはなかなか手間ではないでしょうか。本業である事業経営を行っているのですから、ほかにも目配りしなければならないことが、山ほどあろうかと思います。そこで、当オフィスでは、責任をもってこの一連の工程を管理させていただきます。ぜひ、お気軽にご相談ください。