障害年金における障害の種類


1. 診断書の種類からみた障害年金


ひとくちに障害といっても、様々な障害があります。身体の運動器官の障害もあれば、感覚器官や内臓器官の障害もあります。ほかにも知的や精神、発達の障害まで多岐にわたります。では、障害年金を受給できる障害とは、どのような種類の障害になるでしょうか。実は、障害年金の診断書には、次の8種類があります。

  1. 眼の障害用(様式第120号の1)
  2. 聴覚、鼻腔機能、平衡機能、そしゃく・嚥下機能、言語機能の障害用(様式第120号の2)
  3. 肢体の障害用(様式第120号の3)
  4. 精神の障害用(様式第120号の4)
  5. 呼吸器疾患の障害用(様式第120号の5)
  6. 循環器疾患の障害用(様式第120号の6-(1))
  7. 腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用(様式第120号の6-(2))
  8. 血液・造血器・その他の障害用(様式第120号の7)

ご自身の抱えている障害の状態について、この8種類の診断書の中から一番的確に記載できる診断書を選択して、主治医に作成してもらって、障害年金を請求していくことになります。また、1つの傷病から2つ以上の障害が現れている場合には、二種類の診断書を用いて請求するケースもあります。例えば、脳血管疾患のために手足の運動障害と高次脳機能障害の両方が生じている場合、様式第120号の3(肢体の障害用)と様式第120号の4(精神の障害用)の診断書を提出することになります。

 

このように障害年金は、制度上多岐にわたる障害を対象として想定していますが、どの診断書を用いて請求していくかについては、請求者の判断にゆだねられています。


2. 精神障害の中で認められやすい診断名


精神障害とひとくちにいっても、これもまた多岐にわたります。障害年金制度では、精神障害について、具体的にどのような診断名を想定しているのでしょうか。また、障害年金が認められやすい(あるいは認められにくい)診断名というのはあるのでしょうか。

 

障害年金の受給の可否および等級の認定は、あくまで障害の状態を判断基準としていますが、一方で、ある程度診断名が影響することもまた事実です。障害認定基準では、「統合失調症など」、「気分(感情)障害」、「器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」の6種類に分けて、障害の状態が具体的に例示されています。このことから、これらの診断名であれば認められやすく、そうでなければ認められにくいと言えるでしょう。

 

ただし、診断名が、いわゆる「神経症」であっても、臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものは、「統合失調症など」に準じて取り扱うこと、「アルコール依存症」については「器質性精神障害」の中に含めるといった注記もあるため、診断名のみで判断するのは早計だとも言えます。診断名により障害年金の認められやすさが異なるのは事実ですが、一方で、精神科医療では、診察した医師によって診断名が変わるといった現実もあります。このため、障害年金の請求では、日常生活や社会生活における不便さや困難さといった障害の状態を丁寧に説明していくことが肝だと言えるでしょう。なお、人格障害については、原則として認定の対象にならないことが明記されていますので補足をしておきます。


3. 知的障害を理由に請求する場合


障害年金の制度上は、知的障害も精神障害の一つとして分類されています。したがって、知的障害を理由に障害年金を請求する場合には、精神の障害用(様式第120号の4)の診断書を用いて請求します。認定基準では、「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう」と定義されています。知的障害は生来の障害であるため、加入要件や納付要件は問われません。また、請求のタイプは、20歳前傷病による障害年金の請求となります。20歳の誕生日を迎える前から準備をはじめ、誕生日を迎えた後、なるべく早い時期に請求することをお勧めします。加入要件等が問われない代わりに、受給できるのは障害基礎年金のみで、障害等級は1級か2級に限られます。なお、障害年金の請求のタイプについての詳しい説明は、こちらを参考にしてください。


4. 発達障害でも受給が認められるか


障害認定基準の中で精神障害の診断名の一つに「発達障害」が想定されていることはすでに述べました。このため、発達障害の場合も、精神の障害用(様式第120号の4)の診断書を用いて請求します。その結果、障害の状態が基準に該当すると判断されれば、発達障害でも障害年金を受給することは可能です。

 

正確に言うと、発達障害は診断名ではありません。正確な診断名としては、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などが該当し、実際に認定基準の中で例示されています。ただし、診断書には、「発達障害」とだけ記載することでも、問題はないようです。重要なのは、精神障害や知的障害よりもさらに伝わりにくい、日常生活や社会生活における不便さや困難さをうまく伝えられるか、という点になります。

 

もともと、発達障害は認定基準の中で知的障害の一部として扱われていました。そのため、障害年金を請求する際は、知的障害として請求することが一般的でした。しかし、認定基準の改訂により、知的障害と発達障害を分離し、発達障害を独立して認定することが示されました。この改訂の背景には、発達障害には知的障害とは異なる困難さや不便さがあるといった考え方が広まってきたことが挙げられるでしょう。認定基準には「知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する」との注記があることから分かるように、医師に作成してもらう診断書と請求者が作成する申立書の両方で、発達障害に起因する不便さや困難さをきちんと伝えられるかが、障害年金請求のポイントになると言えます。こうした点は、社会保険労務士であり、精神保健福祉士でもある、塩津社労士オフィス代表の得意分野となりますので、遠慮なくご相談ください