障害年金請求の難しさと解決策


1. 障害者手帳取得者数との比較


障害年金は、国民年金法や厚生年金保険法の給付の一つの種類であり、障害という保険事故を補償するために支給される年金となります。障害を抱える人にとって、とても有用な制度なのですが、実際にはまだ十分に活用されていない可能性が指摘されています。例えば、障害者手帳取得者数と比較すると、手帳を取得・保持している人は約700万人いますが、一方で障害年金を受給している人は約200万人であり、手帳を持ちながら年金は受給していないという人が、約500万人いることがわかります。障害者手帳と障害年金では、要件が異なるので単純な比較はできませんが、それでも障害年金の受給可能性がある人々が請求すらしていない実態が推測されます。


2. 障害年金があまり活用されていない理由①


障害年金があまり活用されていない理由は複数ありますが、その中でも最も基本的な理由の一つは、単に障害年金制度が知られていないということです。障害に関わる社会福祉制度や年金制度は複雑であり、特に障害年金のような特定の支援制度については、一般の人々が情報を得る機会がかなり限られています。そのため、障害を抱える人やその家族が、自分たちが受けられる支援や補償について知識を持たず、請求手続きを行わないことがあります。また、ある程度の知識を持っている方でも、障害年金を受給できるのは身体障害者であるというイメージが強く、精神障害や発達障害では受給できないと誤解している方もいらっしゃるかもしれません。こうした問題を解決するためには、制度に関する情報をより広く、分かりやすく提供し、関係者がアクセスしやすいようにすることが必要です。


3. 障害年金があまり活用されていない理由②


障害年金の受給要件は、老齢年金や遺族年金と比べて複雑であり、身体障害、精神障害、発達障害などの種類や程度によって、異なる診断書やその他の資料が必要とされます。また、障害年金の請求事務は機械的に行えるものではなく、障害の評価とその文書化に専門知識が必要です。診断書を作成して頂く医師とのやり取りもポイントになりますが、医療業界には独特な文化や慣行も存在するため、医師とのやり取りには様々な留意点も必要になります。このような手続きの複雑さや障害年金に特有の要件があるため、多くの人が請求をためらう要因となっています。


4. 医療・福祉業界出身の社会保険労務士の活用


これまでに述べてきた理由から、障害年金制度をいちから完全に理解して、複数ある障害の種類の中からご自身の障害や状況に応じた請求手続きを選択し、さらに留意点を押さえて効果的に医師とやり取りする必要がある障害年金の請求手続きを、初めての方が単独で行うのは、かなりハードルが高い作業になるでしょう。もちろん、ハードルが高いとはいっても、手間暇をかければできない作業ではありません。しかし、人生の中でそう何度も行う手続きではありません。多くの方は、初回の請求手続きが、おそらく最初で最後の手続きになるでしょう。

 

そうであれば、労働・社会保険手続きの専門家である社会保険労務士に任せてしまうのも一案です。ただし、注意も必要です。先ほど述べた通り、障害年金の請求には、年金制度の理解だけでなく、障害や医療に関わる専門知識も必要になります。また、効果的に医師とやり取りできるかは、請求の可否に大きく影響します。こうした点は、すべての社会保険労務士が一概に明るいわけではありません。障害年金の請求は、医療業界の独特な文化や慣習にも詳しい医療・福祉業界出身の社会保険労務士にお願いすることが最善でしょう。